今回は、多くの富裕層と交流してきた投資家、田中渓さんの著書「億までの人 億からの人」から、兆を築くマインドセットについて深掘りしていきたいと思います。
田中渓さんは、世界トップクラスの投資銀行であるゴールドマン・サックスに17年間勤務し、日本の投資部門のトップとして株や不動産、太陽光発電などの投資を手掛けてきたすごい方なんです。そんな田中さんが、20カ国以上300人を超える富裕層と交流する中で気づいた「お金持ちの共通点」は、実は特別なことではなく、当たり前のことを徹底的にやり抜くことだと言います。
さっそく、その共通点について見ていきましょう!
富裕層の共通点とは?ゴールドマンサックスが解き明かす「億り人」のマインドセット
多くの人が「お金持ちって特別な才能や運があるんでしょ?」と思いがちですが、田中渓さんによると、そうではないと断言されています。富裕層の方々は、早起きしたり、運動を習慣にしたり、意思決定が早かったり、積極的に投資したり、人間関係を大事にしたりといった、一見どこかで聞いたことのあるような「当たり前」を、徹底的に、合理的に実践しているんです。まさに「継続は力なり」を体現していると言えるでしょう。
お金持ちは貯金しない!インフレ時代を生き抜く「投資」の重要性
富裕層は、お金を貯金ではなく、株や不動産、ビジネスなどに「投資して運用」している人がほぼ100%だそうです。著者曰く、「稼ぐ人でお金を運用していない人はこれまで僕が見てきた限り1人もいません」とまで言い切っています。
なぜ、貯金だけではいけないのでしょうか?それは、「インフレ」が原因です。インフレとは、物の値段が上がってお金の価値が下がっていく状態のこと。例えば、10年前は100円で買えたマクドナルドのハンバーガーが今では190円になっているように、同じ100万円でも買える商品の量が減ってしまっているのです。つまり、貯金やタンス預金をしていても、実質的にお金の価値は目減りしてしまうということ。
インフレの時は、企業の業績が良くなり、会社の株が上がる傾向にあるため、投資をしておくことが重要なのです。もし何に投資すれば良いか分からない場合は、「インデックス投資」がおすすめされています。まずはSBI証券か楽天証券で口座を開設し、1000円からでもいいので投資に慣れてみることが推奨されています。
人生の舵は自分で取る!富裕層の「意思決定力」
富裕層や投資家には、「自分自身で意思決定する」という絶対的な共通点があります。何に投資するか、どんなビジネスを始めるか、どこに住むか、何を食べるかなど、人生のあらゆる選択を全て自分で決めているのです。彼らが意思決定を他人に委ねることはほとんどないと言います。
「自分で決めるなんて当たり前じゃない?」と思うかもしれませんが、実は多くの人ができていません。なぜなら、決断には「責任」が伴うからです。他人に決断を委ねることで、人は責任を回避しようとします。しかし、それでは大きなリターンは得られず、お金持ちにはなりにくいのです。もちろん情報収集は大切ですが、どれだけ情報を集めても、最終的に決めるのは自分、責任を取るのも自分というスタンスは崩してはいけません。
チャンスを逃さない!「スピード感」を重視する決断術
富裕層は、確実性よりも「スピード感」を重視します。つまり、決断がものすごく早いのです。著者は、「一番いいのは早くて正しい決断だが、二番目にいいのは早くて間違っている決断」だと言います。遅くて正しい決断よりも、たとえ間違っていても早い決断の方が良いということです。
その理由は、チャンスは一瞬で消えてしまうから。迷っているうちに投資のチャンスを逃したり、面接の機会を他の人に奪われたりすることはよくある話。投資、ビジネス、不動産、人間関係、恋愛、あらゆる場面で迷って先延ばしにしている間に、良いものは他の人に取られてしまいます。
また、早く決断して失敗が増えるほど、学びが深まって判断の精度が上がっていきます。早く決めれば、それだけ起動修正(計画の調整)の時間も確保できるのです。普段から「こういう状況が来たらこうする」とシミュレーションして準備しておくと、いざという時に素早く行動できるようになります。
未来への投資!緊急ではないが「重要なこと」を優先する時間術
富裕層は、時間の使い方においても特徴があります。彼らが最も多くの時間をかけているのが、「緊急ではないが重要なこと」です。これは、すぐに効果が出るわけではないけれど、未来の自分にとって非常に大切なこと(勉強、語学学習、企業に向けた準備、人間ドック、歯の定期検診、筋トレ、運動など)を指します。まさに「未来への投資」と言えるでしょう。
多くの人は、緊急だけど重要ではないこと(急な飲み会、どうでもいいメール、SNS通知など)に時間を使ってしまいがちです。しかし、豊かな人生を送るためには、こうした時間を削り、自分にとって本当に大切な「緊急ではないが重要なこと」に意識的に時間を割り振ることが重要だと述べられています。これは、スティーブン・R・コヴィーさんの『7つの習慣』にも通じる考え方だそうです。
成功への近道!「早起き」と「運動」の習慣
富裕層には、とにかく早起きの人が多いという共通点があります。早起きをすると気分が良く、誰にも邪魔されずに自分の時間を満喫できるからだそうです。著者は毎朝3時45分に起きているといい、最初は7時起きから少しずつ前倒ししていったそうです。
さらに、単に早起きするだけでなく、起きてから2〜3時間の運動を習慣にしています。例えば、25km走る、60km自転車に乗る、7000m泳ぐなど。朝からそんなに運動したら疲れるのでは?と思いますが、意外にも脳がリフレッシュされ、思考がポジティブになり、心身ともに健康になれたと語っています。著者が海外出張先で著名人が集まる会議があった際、早朝にホテルのジムに行くと多くの偉い人たちがトレーニングを始めていたといい、早起きの重要性を確信したそうです。
初心者がいきなり早起きするのは難しいので、まずは1時間早く起きてウォーキングに当てるなど、小さな一歩から始めることをおすすめしています 。
「めんどくさい」を乗り越える!最強の習慣化戦略
この本では、「習慣化」がお金持ちになる上で非常に重要なスキルだと強調されています。早起きや運動だけでなく、毎日30分以上の語学学習や1時間以上の読書も、著者は全て習慣化しており、苦労なく続けられているそうです。
根性論でめんどくさいことを乗り切るのは無理だとし、習慣にすることが必要だと説かれています。実際、フィットネスジムに通い始めた人のうち、1年後に続けているのはわずか4%未満というデータもあるほどです。
習慣化するための3つの方法が紹介されています。
- 習慣化したいことを「最優先」する
毎日20時から筋トレと決めたら、カレンダーに書き込み、他の予定を全てブロックするイメージです。言い訳せずに、習慣になるまで他の予定を犠牲にしても最優先することが大事だと言います。 - 特定の行動に「紐づける」
何か別の行動をする「ついでに」習慣にしたいことを行う方法です。例えば、仕事の帰りに筋トレをしたり、電車に乗ったついでに英語アプリを開いたり、ポッドキャストを聞くついでに散歩したり。 - 前日に「準備」を済ませておく
行動する際の手間や考える時間をなくす方法です。朝ランニングをするなら、前日の夜に服や靴、食事を用意しておくことで、「めんどくさいな」と考える間もなく行動に移せるようになります。
とにかく、自分がやると決めたことは全て習慣にしてしまうのが著者の考えです。
自信を育む!「小さな成功」を積み重ねる「勝ち癖」
習慣化の話と繋がってきますが、毎日自分で決めた早起きや筋トレ、勉強などをやり切れると、「ちゃんとできた!」「やればできるじゃん!」「自分って思っているより悪くないかも!」という感覚になり、自信がついてきます。これが、この本で言う「勝ち癖」です。
自分で決めた小さなことを毎日続けると自信がつき、自然と行動がアクティブになり、新しいことにも挑戦しやすくなります。人は過去の経験をもとに「前にもできたから今回もできるはず」と考えるため、小さな成功体験を積むことで「自分ならやれる」という気持ちを育て、良い流れを作っていくのです。もちろん、早起きができたとか、自分の決めた通りに2時間勉強できたといった、ささやかな勝利で十分です。
どんな状況でも崩さない!「ルーティン」の絶大な力
多くの富裕層が実践しているのが、一度決めたルーティンは絶対に崩さないということです。著者の場合、朝3時45分に起きて運動し、毎日30分以上の語学学習と1時間以上の読書を習慣にしていますが、このルーティンは出張先の海外でも、休暇中の旅行先でも変わることはないそうです。友達とのスキー旅行でも、アメリカでの旅行中でも、関係なく毎日ルーティンをやり切ると言います。
なぜここまで徹底するのかというと、習慣を崩さないためです。継続する技術というアプリを開発した戸田大輔さんの調査によると、人は1日サボっただけでも、それをきっかけに熱が冷めて習慣が途絶える確率が69.1%にもなるそうです。病気などのやむを得ない場合を除けば、旅行先やイベントなど、どんな環境でも自分で決めたルーティンを続ける意識が、せっかく身につけた習慣という「魔法」を消さないために重要だと強調されています。
孤独はNG!豊かな人生を築く「人間関係」の分散投資
富裕層は、人間関係も投資と同じように「分散」させていると言います。家族、趣味のグループ、友達グループ、仕事の話をするグループといったように、複数のコミュニティに所属しているイメージです。
なぜなら、会社の人間関係だけが自分のコミュニティになってしまうと、そこでトラブルが起きた時に逃げ場がなくなってしまうからです。また、孤独は体に悪く、WHOによると1日にタバコ15本を吸うのと同くらい健康に悪影響を与え、心臓病や脳卒中、不安、うつ病、認知症のリスクを高めることが分かっています。健康を維持するためにも、複数のコミュニティに所属しておくことが大事なのです。
新しい人間関係を築くためのポイントは、「ギブ&テイク」。自分から積極的に輪の中に入っていき、相手に何かを与えることが大切です。約束を守らない人や嘘をつく人、自分の話ばかりする人など、受け取るばかりで与えない人は敬遠されやすいので注意が必要です。
まとめ
田中渓さんの著書「億までの人 億からの人」から学ぶ、富裕層のマインドセットと共通点は以下の通りです 。
- お金は貯金ではなく、株や不動産などに変えて「運用」する。
- 誰かに判断を委ねず、自ら「意思決定」を徹底する。
- 意思決定をする時は、完璧さよりも「スピード」を優先する。
- 目先の忙しさに流されず、「緊急ではないが重要なこと」に時間を使う。
- 「早起き」して「運動」する。
- 大事だけどめんどくさいことは、意思の力に頼らず全て「習慣化」する。
- 日々「小さな成功」を積み重ねて「勝ち癖」をつける。
- 休みの日は旅行中でも、自分の決めた「習慣」を守り続ける。
- 自分から積極的に与えることで、たくさんの「コミュニティに所属」する。
感想
この本を読んで、私が特に感じたのは、富裕層の方々が実践していることが、決して手の届かないような特別なことではない、ということです。むしろ、「当たり前」とされる行動を、いかに徹底し、継続できるかという点に富を築く秘訣があるのだと深く納得しました。
特に印象的だったのは、インフレでお金の価値が目減りする現代において、貯金だけでなく投資で資産を運用することの重要性が明確に示されていたことです。そして、その投資判断も含め、人生のあらゆる選択を「自分自身で意思決定する」こと、さらに「確実性よりスピード感を重視する」という決断の速さ は、リスクとリターンを理解し、主体的に行動することの重要性を強く訴えかけています。
また、時間管理や習慣化に関する項目も、非常に実践的だと感じました。「緊急ではないが重要なこと」に時間を投資することや、「めんどくさいことを習慣化する」ための具体的な3つの方法 は、日々の生活に取り入れやすく、誰もが実践できるものです。小さな成功を積み重ねて「勝ち癖」をつけるという考え方は、自己肯定感を高め、さらなる行動へと繋がるポジティブなサイクルを生み出すでしょう。
富を築くということは、単にお金を増やすことだけでなく、自己管理能力を高め、健全な人間関係を築き、人生の質全体を向上させることに繋がるのだという気づきを得られました。この情報から学ぶに、お金持ちになるかどうかは、特殊な才能や環境よりも、日々の選択と行動の積み重ね、そしてそれを継続する「マインドセット」に大きくかかっているのだと感じました 。これは、多くの人にとって希望となるメッセージではないでしょうか。